温泉 第1章 益子の民芸と那須の温泉レトロ旅 Day1
仲よしの着物好き女友達ふたりで回る、民芸と温泉の栃木旅。陶芸、民芸、レトロで雰囲気のあるお店や温泉をゆっくり楽しみます。
器好き、着物好き、温泉も大好き。 仲よし女友だち旅!
着物と帯を、糸から染めて織る、そめおり(吉田美保子・50代)さん。
毎週おでかけに着物を着る私(60代、編集者)。
趣味も似ていて、去年出会ったとは思えないほど気の合う私たちですが、今年の5月にそめおりさんは熊本に帰郷してしまいます。うう。
工房を建て、腰を落ち着けて活動するというので、おめでたいことなのですが、遠く離れるのは寂しい!そこでその前にふたりで旅に出よう、ということになりました。
今回の旅では私がそめおりさんの着物と帯をまとっています。
栃木に降り立つと、ひんやり透明な空気感。
「東京より2,3℃低いかも」
「空気が澄んでいて気持ちいい~!」
器好きの私たち、レンタカーで益子へ。
益子駅には大きな益子焼の壺。焼き物で有名なこの町ですが、器の前に染め物も見ます。
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9:00
日本伝統の藍染め文化を伝える「日下田藍染工房」
趣のある日下田藍染工房。染料を溜めておくための藍甕(あいがめ)がズラリ。
奥まで全部、藍甕! 藍の花と呼ばれる泡が湧いていました。藍の小物もたくさん。藍は糸を何回浸すかによって、色の濃さも色名も変わります。
藍染作家の日下田正さんは名手と言われる方。
残念ながら不在でしたが、そめおりさんが「あ、展覧会、今やってるよ!」とポスターを見つけます。
日下田正さんの益子木綿の作品展が近くである!
「やったー! 見に行こう」
急遽決定。
その前に、益子の町で器を見ながらそぞろ歩き。
奥が深いお店が多くて、部屋ごとに違う雰囲気や、新しい作家さんの器が置いてあります。
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10:00
ベテランから若手作家まで扱う陶器店「もえぎ城内坂店」
雰囲気の違う部屋がたくさん。器だけではなく、衣装や雑貨も。
明るいカフェスペース。
夢中になって選ぶ私。この後、購入。
使いやすそうで、優しい肌触りの器ばかり。
「これ、すてき!」
「ねえねえ、あの器、いいよねえ」
目移りする私たち。
盛り上がりながらも、断捨離も考える年頃なので悩ましい・・・。
といいながら、そめおりさんはたっぷりとしたマグカップ。私はお土産も兼ねて杯を4つも購入。うれしくてホクホク。
やはり旅の思い出になるものを、身近に置けるのはうれしい。
益子では毎年GWと11月に益子陶器市が開かれるとか。今度はその時期に来るのもいいな。
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12:00
益子で初めての喫茶店「益子焼&カフェレストラン 壷々炉」
興奮したあとは、益子の町の中でランチ。
器店の延長に、ギャラリー&カフェレストラン、という感じのかわいいお店を見つけ、誘われるように店内へ。「壺々炉」は、益子では数少ない製造販売と飲食店を併設した施設で、現在の形態での営業はなんと30年以上! 飲食と製造販売の店舗としての創業は1978年で、益子で初めての喫茶店なんです。また、益子焼の陶祖・大塚啓三郎にルーツがあり、地場に根差して生業を続けているのもとっても魅力的!
そんな貴重なお店にいることに心弾ませながら、早速ランチの注文。迷いながら決めたのは、そめおりさんはハンバーグ、私はステーキです。
鉄板のお皿に、ジュウジュウ熱々で登場。野菜もたっぷりでうれしい!
「お肉の味が濃くて、おいしい」
「ステーキのお肉もとってもやわらか~い!」
さらに、メニューを提供する際の器にオリジナル益子焼を中心に使用しているので、おいしさだけではなく、しっかり目も楽しませてくれます。 サラダの器や、食後のコーヒーカップもすてき!
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13:00
作品との対話を楽しめる「もえぎ本店&アトリウム」
ひと心地ついたら、レンタカーで先ほど見た藍染め作家・日下田正さんの作品展へ。
自分で糸も染めて織るそめおりさんは興奮気味。
「わ~、作品を見られるのはうれしい!」
ちょっとわかりにくい場所にありますが、森の中に白く美しい建物。
看板も目立たないので、要注意。中に入ると、空間を生かして、作品が際立つ展示。
藍色のヴァリエーションが美しい手織の益子木綿のタペストリーやショール。
そめおりさんが「これはいろいろな糸を繊細な織り方で織っていて、すごく手がかかっていると思う」 「これはニュアンスを出すために両脇にぼかしを入れている」と教えてくれます。こういう素晴らしい手仕事を残していきたいなあ、と私、千鶴子は思うのでした。
改めて、そういう仕事をしているそめおりさんを尊敬!自分ではできないけれど、伝えるお手伝いはしていきたい、と決意。
ギャラリーには広いお店も併設されていて、また夢中になって見る私たち。
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14:00
陶芸家・濱田庄司の世界観を味わう「濱田庄司記念益子参考館」
お次は同じく駅から離れたところにある濱田庄司記念益子参考館へ。
民芸の陶芸家、濱田庄司の作品と、収集品、工房が公開されています。
広い敷地に点在する展示館。4号館まであり、細工場(工房)や器を焼いていた登り窯、他に長屋門という名の濱田庄司館もあります。
濱田庄司は東京出身で京都で陶磁器を学び、イギリス人陶芸家バーナード・リーチと共にイギリスへ渡り、帰国後益子に移り住んだ方。 柳宗悦とともに民芸運動の立役者にもなります。
どの展示館にも、見事な濱田庄司の陶磁器と、彼が各国から収集してきた器や民芸品がズラリ。
作品はおおらかで使いやすそうで、繊細で味わい深い。
いつまでも見ていたくなる、触れたくなる、ぬくもりを感じました。
どれも私たちの好みにぴったり!買えないけど(笑)。静謐な工房。濱田庄司が使っていた。
大きな登り窯は益子町指定有形文化財。震災の後、修復され「濱田庄司登り窯復活プロジェクト」として2015年と2018年に火が入ったそう。 今後もイベントが企画されています。
ものすごい見応えで、がんばって行く価値がありました!
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15:00
Kura Master 総合第1位受賞!「外池酒造」
レンタカーを返して、歩いて。外池(とのいけ)酒造へ。
うふふ、そうなんです。ここで試飲を予約していたのです。
その前に蔵の中の見学を。
ここは昭和12年創業という、歴史ある酒蔵。数々の賞も受賞し、フランスで行われた「Kura Master」で総合第1位のPRESIDENT賞を勝ち取ったほどの日本酒を製造しています。お酒造りの説明を受けながら、感じたのはお酒への強い情熱と愛情。
どんな質問にも熱心に、詳しく教えてくれます。大きな木桶で醸す真似。
いよいよ試飲です。
3種類の日本酒、仕込み水とおつまみ付き。
・純米吟醸 無濾過生原酒「はつしぼり 雪さんらん」
・燦爛 純米大吟醸 「夢ささら」
・燦爛 大吟醸
「おいしい~」
「クイクイいけてこわい」
おつまみ三種はどれもおいしくて、お酒もおつまみもお土産に購入。
帰宅後の家族とのお楽しみ。
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17:00
豊かな自然と美肌の湯「那須高原の宿 山水閣」
さてすっかりいい気分になった私たちは電車に乗って一路那須へ。
この日の宿泊先は「那須高原の宿 山水閣」。 那須塩原駅から各宿泊施設の最寄りの停留所まで行ける乗り合いバス(宿泊施設より事前予約必要)があるので、アクセスのしやすさも抜群です。到着したときは暗かったので、翌朝の写真。
昭和初期の木造建築が生かされているという、落ち着いたたたずまいの旅館。
「すてきなお宿だねえ」
「きゃ~、うれしい!」
のれんをくぐると、なんとも温かい空気感。すご~く寒かったので、気分はほっこり。
すぐ温泉へ行きたいけれど、その前に私たちにはミッションがありました。
着物姿の私たち二人の写真を撮ろう!
そめおりさんはホテルに送ってあった着物をさっと着て、ロビーに。
館内はどこも風情があって、フォトスポットがいっぱい。はしゃぐ私たち。そめおりさんのポーズ、決まってる!
「ここで1枚」
「あそこもすてき」
「談話室があるんだって」
ワイワイ話しながら移動して撮影大会。
ホテルの方、ありがとうございました!
夕食は寝室ではなく、すてきな個室のお食事部屋。
着物で乾杯して、ここでも記念撮影。
初めはなんと三段の小引き出しが登場。
一段ずつに美しくお皿が並ぶ仕掛けにびっくり。
お造り、柿の白和え、鴨、カブ・・・どれもしみじみおいしい。
この後、豆乳しゃぶしゃぶやキノコの炊き込みご飯も。
野菜もお肉もごはんもおいしくて、盛り付けも器も、本当に美しくて堪能しました。うっとりして大満足だけど、ここで寝てはなりません。
ちょっと食休みしてから、待望の温泉へ。
1日寒かったので、期待マックス。
ほんのり木のかおりのする湯船に浸かると
「あ、た、た、か、い」
「溶ける~~~」
じんわりじんわり体中にしみ渡る熱さ。お湯質が柔らかくて、肌がさらさらしっとり。
静かに照らす照明の中で眠くなってしまいそう・・・。
お部屋もゆったり、椅子もあり、畳もあり、お布団ふっくら。トロントロンにくつろぎます。
おやすみなさい・・・
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ROUTE MAP

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後藤千鶴子、吉田美保子
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19××年生まれ。長年雑誌編集者で、現在は校正&ライター。
着物でアート(美術展、コンサートほか)を見に行くのが趣味。
吉田さんは50代の染織家。https://www.someoriyoshida.com
※撮影日:2024年12月17日~12月18日
※掲載されている情報は2025年2月14日現在のものです。内容の変更等でご利用できない場合がありますので、あらかじめ出発前にご確認ください。